密教を生きる 



(ひろさちや著『空海入門』を参考にまとめました)

■日々の心得
〇普通の人間が一段一段と階段を登っていくことを考えているときに、空海はそんな過程を全部すっとばして、いきなり頂上から始めたのだ。一般の仏教者が、なんとかして仏の世界に近づこうとして努力していたのに対して、空海はいきなり仏の世界に飛び込んでしまって、それから仏教を始めたのである。

〇修行を積んで、その結果仏陀になれるというのが、本来の仏教の考え方だろうけれども、いきなり仏陀になってしまって、そのまま仏陀として生きてみるやり方だって考えられそうである。

■毎朝、ブッダになる
〇毎朝ブッダになって、そのままブッダとして生きることができたらどうだろうか。つまり、ブッダになったつもりで、その日一日を生きるのである。あるいは、私たちは凡人だから、失敗するかもしれない。でもかまうことはない。翌朝もまた私たちはブッダになるのだから、ブッダのまま生きればいいのだ。

○仏陀のマネをするわけである。徹頭徹尾、仏様をマネて、仏様になりきれば、我々は仏様ではなかろうか。

■職場
〇たいていの会社が、社長・重役になろうと営々努力しているのに対して、はじめから社長・重役になったつもりで、自分のやりたい仕事をスイスイとやっているようなものだ。いわば、空海の方法とは「まず、その対象に飛び込め」なのである。

〇どこか傲慢だ。同輩や主任・係長などから嫌われるだろう。でも案外、上と下に人気がある。

■恋愛
〇男と女の間には、深くて暗い河などない。なぜなら、河のこちら岸に立った瞬間、もう向こう岸にいるのである。向こう岸にいて次の行動を考えている。女を口説こうと思った瞬間に、フレンドリーにハグをして、自然とキスをしているような感じだろう。

■家庭
〇お父さんは、自分はよくできる人間だと信じていた。学校で一番だと信じていた。だから、学年順位が何番だとか、先生がつける成績には関心がなかった。お父さんが100点を取れないのは、試験問題のほうが間違っている。正しい試験問題であれば、お父さんは100点を取れるはずだと思っていたんだよ。

■社会に飛び込む
〇よく言われるのは、主体性の確立ということであった。強靭な主体性を確立して、社会に立ち向かえと。時代に流されない個我を確立せよとね。でもそんなこと、できる訳がないでしょう。個人がいくらあがいてみても、ビクともしない社会がちゃんと出来上がっいているんですよ。

〇空海という男が言いそうなことは
「社会と対決しようと思うからあかんのや。社会に飛び込んでみたらええ。どんな社会にもヘソがあるから、そのヘソをつかんで動かしてみたら、スイスイと行くんや」
「仕事をしようと思うたらしんどいで。あんまり考え込まず、仕事の中に溶け込んでみたら、案外うまくいくで」

■肯定の哲学
〇日本人はもう疲れてしまったのです。こんなに豊かになりながら、ちっとも満足感のない毎日を送っています。私たちの毎日はいわば「空虚」になっています。感動がありません。そんな日本人に今必要なのは「肯定の哲学」です。私という存在をしっかり大肯定してくれる、そういう哲学・思想がほしいのです。

〇空海は、ちょっと日本人離れのしたスケールの大きい人物です。ユニークな人間です。魅力いっぱいの人間です。だから、お先真っ暗な現在の日本社会に、明るい光を投げかけてくれるだろうと思います。



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