修行・儀式



■四度加行(しどけぎょう)
 真言密教における初歩的階梯の4種の修行。すなわち,伝法灌頂に対する準備的修行であって,十八道,金剛界,胎蔵界,護摩の4法が伝授される。

■阿字観(あじかん)
 阿字観とは真言宗に伝わる瞑想法で、元々は僧侶が気持ちを落ち着かせるために行っていたものです。しかし、近年になり一般の方々から高野山には瞑想はないのかということが言われ始め、僧侶が行っていたこの瞑想を一般の方も受けられるようになった。
 坐禅のように警策(けいさく)と呼ばれる棒で叩かれるとこなく、ただ梵字(サンスクリット語)の「阿」という文字を見ながら行う瞑想法。阿字観を観法することにより、阿息観(あそくかん)、月輪観(がちりんかん)、阿字観の3つを体現できるようになる。
  

■灌頂(かんじょう)
 主に密教で行う、頭頂に水を灌いで諸仏や曼荼羅と縁を結び、正しくは種々の戒律や資格を授けて正統な継承者とするための儀式のことをいう。元々は天竺といわれたインドで王の即位や立太子での風習である。釈迦の誕生日を祝う祭りである灌仏会もこれの一例であったが、インド密教において複雑化した。


■結縁灌頂(けちえんかんじょう) 
 出家や在家、あるいはその対象を問わず、どの仏に守り本尊となってもらうかを決める儀式。投華得仏(とうけとくぶつ)といい、目隠しをして曼荼羅の上に華(はな)を投げ、華の落ちた所の仏と縁を結ぶところから結縁灌頂の名がある。空海は3度これを行い、3度とも大日如来の上に落ちたと伝えられる。

■受明灌頂(じゅみょう かんじょう) 
 修行して密教を深く学ぼうとする人に対して行われる。仏と縁を結ぶ入門的な結縁灌頂と違い、弟子としての資格を得る灌頂なので、弟子灌頂ともいう。また、密教を学ぶための資格である「十四根本堕」や、「八支粗罪戒」等の三昧耶戒を授かることから、現在の日本密教では「許可灌頂」(こか かんじょう)ともいう。

■伝法灌頂(でんぼう かんじょう) 
 金胎両部伝法灌頂ともいう。阿闍梨という指導者の位を授ける灌頂。日本では、鎌倉時代に覚鑁の十八道次第を先駆とし成立した四度加行(しど けぎょう)という密教の修行を終えた人のみが受けられる。ここで密教の奥義が伝授され、弟子を持つことを許される。また仏典だけに捉われず、口伝や仏意などを以って弟子を指導することができ、またさらには正式に一宗一派を開くことができるともいう。
 
■事相と教相(じそうときょうそう)
 真言密教を学んでいくうえで、事相(じそう)と教相(きょうそう)が重要視される。事相とは、真言密教を実践する方法、すなわち修法の作法(灌頂・護摩・観法・印契・真言などの行法)を指す。これに対し、教相とは、真言密教の理論である。
 真言宗の主要経典「大日経」は教相の経典、金剛頂経は事相の経典である。教相を学んでいくことで、真言密教の理論を理解し、理論を実践する方法を行うために事相を学ぶ。教相の裏付けのない、事相は無意味な動作になってしまうという。

■護摩(ごま)
 仏教には釈尊入滅から約500年後に発生した大乗仏教の成立の過程でバラモン教から取り入れられた、と考えられている。そのため、護摩は密教(大乗仏教の一派)にのみ存在する修法であり、釈尊の直説に近いとされる上座部仏教には存在しない。おもに天台宗、真言宗で行われる。なお、専ら護摩を修するための堂を「護摩堂」(ごまどう)と称する。

 護摩の炉に細長く切った薪木を入れて燃やし、炉中に種々の供物を投げ入れ(護摩焚き)、火の神が煙とともに供物を天上に運び、天の恩寵にあずかろうとする素朴な信仰から生まれたものである。火の中を清浄の場として仏を観想する。


■後七日御修法(ごしちにちのみしほ)
 宮中で行われた法会(ほうえ)。「ごしちにちみしゅほう」ともいう。正月8日から14日まで、玉体安穏、国利民福を祈って宮中の真言院で修せられた真言秘密の大法会。前七日の神事に続く後七日の修法(しゅほう)の意。835年(承和2)空海の奏請(そうせい)で中国唐の風習に模して設けられた。
 金胎(こんたい)(金剛界(こんごうかい)、胎蔵界(たいぞうかい))両部の法を隔年交互に勤修(ごんしゅう)した。室町末期に一度中止されたが、江戸初期に復興した。明治維新後は東寺(教王護国寺)に移行され、現在も真言宗十八本山が集まって東寺灌頂院(かんじょういん)で営まれる。



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